店内展示第15回 
2022年1月15日(土)〜 3月31日(木)
地図・パンフレットに見る
​    満州と幻の国「満州国」】

それぞれの満州                                                                    筑波大学人文社会系教授 伊藤純郎

 

 2016年8月、1938年に満州国吉林省舒蘭県四家房に入植した満州大日向村を訪問した。満州大日向村は、長野県南佐久郡大日向村(現・佐久穂町大日向)がわが国で最初に村を半分に割って満州国に入植する満州分村により誕生し、小説・新劇・映画・紙芝居で全国に喧伝された村である(『満州分村の神話 大日向村は、こう描かれた』)。

 8月4日夕刻に成田を出発し瀋陽(旧奉天)に入り、翌5日瀋陽から中国高速鉄道で満州国の首都であった長春(旧新京)を経て吉林に到着、現在は吉林省吉林市の県級市(日本の県に相当)舒蘭市に位置する旧満州大日向村に向かった。かつての南満州鉄道(満鉄)である中国高速鉄道の車窓から目にする風景は、日露戦争に勝利した日本がロシアから旅順・大連の租借権や満鉄の経営権を獲得し、その後権益を拡大した地域である「満州」ではなく、広大な農村と工業都市が混在する21世紀の「中国東北部」であった。

 

 日本人にとって満州のイメージは、時代によって異なる。日露戦争から20年余の昭和初めの満州は、「ここは御国の何百里 離れて遠き満州の 赤い夕陽に照らされて 戦友(とも)は野末の石の下」で始まる軍歌「戦友」に象徴される、日露戦争での犠牲者の記憶が濃厚な地であった。だが、1931年9月18日に奉天郊外の柳条湖で起きた満州事変や翌年に建国された「満州国」以降は、国策となった満州移民の入植地となり、終戦後は引き揚げの場となる。

 満州移民には、一般の満州開拓民の他に、満州分村移民や満蒙開拓青少年義勇軍などがあり、茨城県はそのいずれにも深いつながりがある。満州分村移民は大子町・笠間町(現・笠間市)で実施された。現在日本一の生産量を誇る「つくば芝」を最初に栽培したのは、陸軍西筑波飛行場跡地(現・つくば市西高野白水)に再入植した大日向の人びとである。また、満蒙開拓青少年義勇軍の国内訓練所は東茨城郡下中妻村内原(現・水戸市内原)にあり、ここから8万6500人の義勇軍が渡満した(『満蒙開拓 青少年義勇軍物語―「鍬の戦士」の素顔』)。

 

 本展示は、こうした満州をテーマにした資料展示である。

​<展示品一部>

1.   【重要物産入 満州帝國全圖 地番入 新京市街全圖】大改正 昭和9年 発行:十字屋

2.   【新京概觀】無刊記 新京特別市公署 満洲事情案内所 共編

3.   【大連 鳥瞰図】吉田初三郎 観光社編纂 昭和4年

         発行:ジャパン・ツーリスト・ビユーロー大連支部

4.   【満蘇國境方面詳圖 最新 満洲國詳密大地圖】昭和16年 改訂第百十五版 発行:伊林書店

5.   【最新實測 區劃及地番號記入 奉天市街地圖】昭和4年3版 発行:満州奉天浪速通 弘文堂書店

6.   【當選満洲都市道中双六】大連新聞學藝部案 今井一郎先生画 小學生新聞附録 昭和10年

7.   【奉天】昭和11年度版 編集:加藤郁哉 発行:満鐵鐵道部旅客課 南満洲銕道株式會社

8.   【新京】昭和10年度再版 著:加藤郁哉 発行:満鐵鐵道部旅客課 南満洲銕道株式會社

9.   【満洲旅行便覧】無刊記 南満洲銕道株式會社

10. 【京濱 濱綏 濱洲線案内】康徳2年 銕路總局

11. 【國都建設計畫地圖入 新京地番入地圖】改正 昭和9年 発行:十字屋

12. 【最近調査 大漣市街地圖】昭和2年 発行:大阪屋號書店

13. 【改訂 最新満蒙地圖】昭和5年訂正2版 著・発行:南満洲鐵道株式會社

14. 【中華民國・満洲國商工録】昭和15年 発行:亞細亞年鑑

​その他、戦前のパンフレット・地図・書籍をショーケース全3台にて展示致します。

※「満洲」・「満州」の表記、その他旧字体について

チラシ掲載写真資料については発行当時の表記とし、

それ以外は「満州」という表記に統一致しました。