佐藤朔先生と軽井沢高原文庫
佐藤朔先生との出会いは、約40年程前に私が旧軽井沢に古書店を出店した時でした。
ある時、「慶應の佐藤です。本を引き取りに来てほしい。」という連絡を受け、旧軽井沢の急な坂を登った所にある別荘を訪ねました。その後、時折先生がお店に立ち寄ってくださるようになり、夏になるとセゾン美術館や軽井沢高原文庫に行かれる際には、私もご一緒させていただきました。帰りには星野温泉や中軽井沢のお寿司屋さんに寄るのがお決まりのコースで、奥様も時折一緒においでになられました。
佐藤先生は慶応義塾長、交詢社理事長、日本私学振興財団理事長、恩賜賞を受賞されたことなど、ご自身の事については一度も話されることはありませんでした。
先生との思い出で私にとって忘れられないことは、軽井沢高原文庫の設立について悩んでいた時に、「すぐに中村真一郎に相談するように。」とおっしゃっていただいたこと。軽井沢高原文庫に皇太子、皇太子妃美智子様をお招きしたい旨を相談した際、「本当においで頂きたいのであれば、おいでになられたら歓迎することをお伝えしなさい。」とアドバイスをされたこと。つくばに古書店を出店する件があることを話した時には、「それは面白いかも。」とおっしゃって頂いたこと。
現在の軽井沢高原文庫があるのも、つくば市にブックセンター・キャンパスがあるのも佐藤先生のおかげです。
佐藤先生がお酒を飲まれた時に一度だけ、「君の所(軽井沢高原文庫)では東大出身者ばかりの展示が続いている。思い切って丹羽文雄でもやったらどうだ?」と言われたことがあります。当時、軽井沢高原文庫では堀辰雄、中村真一郎、立原道造、福永武彦、川端康成と、たまたま東大出身者ばかりの展示が続いていました。今年の夏は佐藤先生の教え子である遠藤周作の展示が行われています。
■軽井沢高原文庫
夏季特別展「生誕100年記念 遠藤周作展―『沈黙』から『深い河』まで―」
2023年7月15日(土)~2023年10月1日(日) ※会期中無休
〒389-0111長野県北佐久郡軽井沢町長倉202-3 TEL.0267-45-1175
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